クリエイティブに憧れて

クリエイティブになりたいけどなれない。だけどなりたい人のブログ。

言の葉の庭 〜孤独な2人が交わる世界〜

映画『言の葉の庭』は、映画監督である新海誠監督が原作から手掛けたアニメーション作品です。

本編は40分と短いですが、それ以上に感じさせる内容の深さがあります。

さっそく、『言の葉の庭』のストーリーについて見ていきましょう!

 

メインの登場人物は2人

言の葉の庭』に登場する人物は2人。

高校生の秋月孝雄と、その高校で古文の教師を務める雪野百香里。

ただし、2人は同じ高校の教師と生徒という関係性でありながら、面識はありません。

そんな2人ですが、『雨』というキーワードによって、出会い、お互いを知っていきます。

 

孝雄と雪野の共通点

お互い面識のない2人ですが、ストーリーが進行していくうちに、ある共通点が見えてきます。

それは、今ある現実を直視していない、言い換えれば、現実を受け入れていない、という点です。

孝雄は、家庭環境の影響もあってか、周囲より大人びた人物として描かれています。(そもそも、劇中で1人語りをされるためには、ある程度の大人びた感情が必要ですが)

孝雄は、高校生活をひどく子供じみた場所だと卑下している。そして、靴職人になって靴を作る、という夢を抱くことで、現実から抜け出して、違う世界に行くことに憧れています。

孝雄は、大人にならなければならないと焦っているのです。

一方、教師である雪野も、現実から目を背けて公園でお酒を飲んでいます。

雪野の場合は、辛い現実に耐えられなくなった結果、自分を失い、現実から1人宙に浮いた状態になってしまった。

『私、まだ大丈夫かな?』という劇中のセリフが印象的なように、居場所を失い、壊れてしまう一歩手前を彷徨っているのです。

『現実を受け入れられていない』という2人の心情は、見る側を惹きつける1つのポイントとなっています。

多くの人は、多かれ少なかれ、現実に不満を抱いていると思います。

そうした心情、日々のストレスを、2人に重ね合わせて見ることができるからです。

さて、『現実を受け入れていない』2人ですが、『雨』という自然現象によって出会い、心を寄せていくこととなります。

 

『雨』というキーワードによって生まれる作品的魅力

孝雄は、雨の日の午前中は学校を休む、というルールのもと、公園に足を運びます。

『雨』というキーワードが、雪野と孝雄を出会わせるのです。

ここが、新海監督のさすがといえる点というか、秀逸だと思うシチュエーションでもあります。

ストーリーを進行させるためには、主人公とキーパーソンを、何かのキッカケに出会わせる必要があります。

話が始まってから、誰とも出会わず自己完結するような話は、滅多に存在しませんよね。

誰かと出会い、心情や状態に変化を生じさせる。それが、ストーリーコンテンツの醍醐味でもあります。

そして、この『出会う』という出来事にどれだけ気を遣えるか、というのも、その作品を左右する重要な要素です。

ここが月並みだと、作品全体が一気にツマラナイものになってしまう。

その点、『言の葉の庭』では、出会いのキッカケを『雨』にすることで、さまざまな効果を生み出しています。

まず、『雨』を表現する美しい描写。(ここでは、映画的な描写のことを指します)

本作の魅力となっている美しい描写も、『雨』を主題に持ってきてこそ成立するものです。

また、『雨』というのは本来、人の心を沈ませるものですが、孝雄と雪野は『雨』が降ると妙に明るくなる。

この、逆説的な2人の心情が、現実から抜け出した2人だけの世界、を表現するのに一役買っています。

 

2人だけの世界で心を寄せ合う

新宿御苑が2人だけの世界を形作っている点にも注目です。

2人は現実を離れ、その世界のひと時で心を寄せ合っていきます。

それぞれ現実があり、2人だけの世界がある。

共通項によって、2人の距離を表現しているのです。

また、この共通項を梅雨の時期に重ね合わせることで、ストーリーの起伏を巧みに生み出しています。

 

全体的なストーリーの流れ

出会い、親睦、決別があり、最後には2人の心が一致する。

ストーリーの流れとしては、比較的オーソドックスであるといえるでしょう。

2人の心の動きに着目すると、まず、出会ってからは順調にお互い惹かれあっていきます。

ところが、幸せだった2人の時間は、梅雨の終わりによって引き裂かれてしまいます。

孝雄は、雨という動機を失い公園に行きあぐねている。

一方、雪野は孤独と葛藤の夏を過ごす。

お互い、雨を願い会うことを願っているのですが、一夏を経てすれ違いが生じてしまいます。

そして、怒涛のラストシーン。

2人ははじめて、自分の心をさらけ出し、抱擁という形で一致するのです。

 

感想

男女の恋愛を描いていますが、その感情を最後まで直接的に描かないことが、この作品の特徴です。

近づいては離れる2人の心が、映画音楽も相まって、切なく描かれています。

しかし、最後にはハッピーエンドで終わることから、爽やかな後味を残しています。

作中に直接的な表現や、目に見える関係性の変化を描かなくても、男女の触れ合いを描ける点が、ストーリーを作る上で参考になります。